2016年11月17日木曜日

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フェザークラフトブランドの真価


非常に残念な知らせが舞い込んでから、創業者であるダグが作り上げた「フェザークラフト」ブランドの中身とは何だったのだろう、と考えてみました。
企業経営的なことをちょっと勉強していたので、ざっと思いつく限りで何が出てくるか興味があったもので。
なお、超個人的なバイアスがかかっていますので、ご承知おきを。
内容的には、ご自身で事業や商売をされている方からすると噴飯ものかもしれませんが悪しからず。

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スキンカヤックとしても美しいカヤックである、とか、エクスペディションに耐えうる唯一のフォールディングカヤックである、ということは結果にすぎず、それを生み出せたものは何だったのか、ということに関心が向いています。

日本人にとっては、「バンクーバー」や「カナダ」というキーワードもプレミアム感があるのかもしれないけれど、
「作り手が高度な技量を持つパドラーで、絶えず改善を続け、新しいモデルを生み出し続けている」
というところがフェザークラフトブランドのコアバリューなのではないかと考えています。

もともとの初代K-1自体もかなり革新的な艇(エクステンションバーの発明!とか)であったうえに、現時点の高品質の維持ではなく、自分たちが過去にした改善も否定するレベルでの変更を継続して行ってきたことがフェザークラフトのすごさだと思います。

2代目K-1。初代との大きな違いはスプレーカバーの形状。
3代目 K-1 ハッチ・フリップアップラダーが斬新だった。


・フォールディングカヤックで初めてハッチをつけた艇だった
・フリップアップラダーシステムはダグの発明
 (パテント取っていないのでコピーされまくったと言っていたが)
・ラダーサポートのパーツの肉抜き加工が途中から始まった
・ラダー断面の流線形加工が途中から始まった(昔はただの板だった)
・グリーンランド型のフォールディングカヤック(カサラノ)の完成
・この20年で、バウがそりあがった艇ができた(ウィスパー)上、定番のK1、K2にもバウ形状の改善を反映した
・FRPコーミング採用⇒ビルトインコーミング採用のため廃止


昔日本に輸入されていたフォールディングカヤックメーカーの、ドイツのクレッパ―やフランスのノーティレイ、カナディアンカヌーならノルウェイのベルガンスアリー)の艇は今も存在していますが、この数十年、場合によっては創業時から艇の機構やデザインへの抜本的な見直しがされたことが無いように見えます。
それがよいところといえばそうとも言えるけど、「生きている」商品というよりかは、今でも新車で買えるクラシックカーみたいな感じですね。
(「Back to the Future」で出てきたデロリアン新車で買えるようになるそうですが、ちょうどそんな感じ)

創業から40年、旅でのユーザービリティを、フィールドからのフィードバックを元に改善と改良を継続してきたフォールディングカヤックメーカーは他にありません。
(川系ホワイトウォーターカヤックや競技艇のメーカーだと当然のことなのですが、ツーリングカヤックは漕ぎのテクニックが大きく変わることはありませんからね…)

改良と一言で表しても、ただ使いやすい、耐久性があるというだけではなく、
シンプルか?

エレガントか?
旅をする上で有用なことか?
が非常によく考えられています。
その上で、それを実現するためのコストどうする?という順番で発想して艇を作っているのではないかと思いをはせたりしています。

改良へのコストの影響か、艇の性能の向上とともに、大きく値上がりもしました。内部的には地道なコスト改善もしているようですが、販売価格を下げられるほどではないようです。まあ、安くなったから沢山売れるモノでもないのですが。
為替レートの影響もあるとはいえ、国内での販売価格の変遷はこんな感じのはずです。

K1の価格
1990年代前半⇒40万円程度
1990年代後半⇒50万円程度
2000年代…?(競技に専念していた頃なので知らない)
2010年代⇒70万円台~

Kライトの価格
1992年発売時⇒25万円程度
2013年最終版⇒40万円程度

これだけの値上げをしても、コストの回収がしきれていないことに、販売数の低迷と、要求性能を満たした艇を作るための膨大な投資が見て取れます。
しかし、エンジンが付いていない、1人か2人しか乗れない、日常生活では全く使わない道具が、日本で毎年一定数売れているのがすごい。
他の海外製フォールディングカヤックの国内取扱いが無くなる中これまで続いてきたということは、それだけの価値があるモノだったし、そのモノに夢中になる、販売側を含む人たちがいたんだと改めて実感。


これだけ有名なブランドなので、どこかが生産を引き継ぐことになったりすることになるのかもしれないけれど、ただブランドの価値で権利を手に入れても、すぐに魅力が色褪せてしまう予感がします。
安定供給されたとしても、化石やおもちゃになったフェザークラフトは見たくない。
今ある製品の維持や既存商品の再現だけでは、ブランドが廃れる一方になるのではないでしょうか。


「カヤックを使った旅」に思い入れのある誰(どこ)かに、これまでの
・たゆまない開発や改良
・カヤック旅をする上での有用性を重視
・カヤックの造形に関わる美的センス
といった姿勢や有り様も含めて引き継いでもらえないものだろうか…
と、スーパームーンの残滓を見つつ夜長の空を見上げたりしています。
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