2018年9月30日日曜日

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Sustainable Canoeing

日本カヌー連盟の派遣事業で、9/4〜11にスペイン、ラ・セウ・ドゥルジェイで開催されたカヌースラローム ワールドカップ最終戦の視察に行ってきました。昨年のフランス・ポーの視察に続くものです。


昨年から今年で、大きくレース結果の集計システムが変わったので、新しい仕組みの導入進捗を確認するのがメインの役務だったのです
集計システムがどういうものになったかについては、こちらの国際カヌー連盟のFaceBookの投稿で見られます。
が、その辺りはかなり技術的な話になるので、ここではさて置こうと思います。

今回視察に行ったラ・セウ・ドゥルジェイのカヌースラロームコースは「セグレオリンピック公園(Parc Olímpic del Segre)」はバルセロナオリンピック開催時に建設された人工コースです。(英語版のWikipediaにも載っています。)
ちょうど、東京オリンピックのために葛西臨海公園に建設されるカヌースラロームコースと同じような成り立ちです。

葛西臨海公園のカヌースラロームコースも、オリンピック後の後利用を担当する業者が決定したようですが、オリンピック後の後利用については、このコースはかなりうまくいっているのではないかと思います。

ラフティングなどのレジャー利用の他に、地元のカヌークラブのメンバーがこのコースを拠点に練習し、常に誰かが漕いでいる=常に利用されているコース、ということが非常に重要なポイントです。
常に利用されている(個人で練習などで利用することもできる)ということは、イベントで貸切らないと使えないような収益構造ではなく、個人でトレーニングに使えるくらいの費用負担で利用できるだけの仕組みが構築されているということで、こういう形の運営ができるコースでないと、継続して利用することはできません。

常時利用しているだけでなく、このコースでは、国内レース、国際レース(ピレネーカップ等)、ワールドカップ・世界選手権など、年間10レースほどが開催されています。
これらのレースを支えているのが、このコースを拠点に活動する地元のカヌークラブです。今回の大会では、ボランティアとして運営をサポートしていました。(そして、かなり手慣れている)きっと小規模なレースだと自分たちが運営主体なのでしょうね。

日本でスポーツのクラブというと、サッカーや野球の少年団やスイミングスクールなどをイメージしますが、ここでの大きな違いが、大人まで含めて現役でそのスポーツをしている人がいる、かつて国の代表レベルだった選手もクラブに所属している、といったことでしょうか。

日本のスポーツクラブだと、子供・中高生・大学生・社会人で組織が分断されてしまっていますが、老若男女、漕いでいる人もそうでない人(ジュニア選手の親とか)もが一つの組織で運営されているのが大きな違いでした。
野球やサッカーくらいメジャーなスポーツだと、分断しないと組織が大きくなりすぎてやってられないかもしれませんが、競技人口が少ないスポーツのあり方としてはかなり有効なのではないかと思います。
メンバーの数が集めやすいということは、経済規模も大きくなるので、小規模なクラブや団体が乱立しているよりも色々と出来ることが増えそうです。
さらに、ベースとなるコースがあるということは、練習する環境(しかも、ワールドカップを開けるレベルの練習場所!)も確保できているので、スポーツをやるには理想的な環境です。

日本国内では、毎年国体で新しいカヌースラロームコースができているにも関わらず、
・根城とするコース
・老若男女、漕いでいる人もそうでない人もいる多様なメンバー構成
の両方を持っているクラブの数は増えていません。

今回の視察で、「日本はどうやって選手が育ってくるの?」と聞かれて、「親(Family)。」としか答えられなかったあたりに、なかなか裾野が広がらない原因がありそうです。

この問題は、多分カヌースラロームだけの話ではなく、いわゆるマイナースポーツ全体の話ではないかと思います。
アマチュアレスリングとかも、盛んなところは元オリンピアン個人が開いたレスリングジムがあるかないかだけだったりするし。

題名の「Sustainable Canoeing」は、ボランティアのメンバーの緑色のTシャツの背中に大きく書かれていたフレーズです。

グリーンのTシャツの人たちがボランティアです。


誰かが個人的に頑張っている、個人の負担に頼って運営されているーーという状況ではなかなかこういった言葉は出てこないのではないでしょうか?
また、その逆で、スポーツの組織が誰かの利権装置になっている状況でも出てこないでしょうけど。

まあ、往往にして、そういう組織については、周りの人(場合によっては中の人もだけど)が、「アイツは何か利権的なものがあるからやっているに違いない」的な見方をされていて、中にいる人も周りもあまり健全な感じがするものでもありますが。
そして、本当に個人的に懐にお金をいれている人がいて救いがなかったりするのを見ると、なんだかなあ…という気になったりしています。(そういう人がいるから、必要なお金をもらうのもやりづらくなる)

なんだかとても長くなってしまいましたが、簡単にまとめると、

  • 場所が必要
    そのスポーツをする(できれば世界レベルの練習が費用・回数的に継続的にできる)場所
  • 開かれた組織を持つクラブが必要
    老若男女、漕いでいる人もそうでない人、地域の人もそうでない人もいる多様なメンバー構成されていること
  • ある程度は金がいる
    多くの時間やスキルを割かなくては人にはちゃんと見合う額が払えるだけのお金が回っている

が揃わないと、なかなか「持続可能」にはならないなー、これはこれで学ぶべきところだ、と海外を見てきて思いました、ということです。


さてさて、それはそれでいいとして、そのために自分には何ができるだろうか?

最近時間的にも金銭的にも(そしておじさんになってきたので体力的にも)かつかつになってきたのでちょっと考えないと、こちらが持続不可能になりそう。




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